技術情報


  放牧酪農(マニュアル)

●放牧の方法

1.放牧計画
搾乳のため畜舎と放牧地の間を往復させるので、放牧地はできるだけ畜舎の近くに配置します。
乾乳牛、育成牛は遠くの牧区に放牧してもかまいません。
草地の年間利用計画
草地の年間利用計画
(草地面積30ha、搾乳牛32頭、乾乳牛8頭育成牛13頭)
2.草地の兼用利用
牧草の生育は季節によって大きく異なります。1年を通じて同じ面積の草地に放牧すると、春のスプリングフラッシュの時期は大量の草が余り大きな不食過繁地を形成することになります。そのために、1番草採草時までは放牧地の面積を1/3程度に減らし、残りの草地は採草するようにします。1番草採草後は放牧地を1/2の面積に拡大し、番草採草後は2/3,3番草採草後は全草地を放牧利用することにします。
このように、採草地と放牧地の面積割合を季節によって調整し、採食量に見合った放牧面積を設定することにより、高栄養で嗜好性が高い短草状態を維持することができ、高い利用率を保つことができます。
飼料調製・給与、ふん尿処理に要する労働時間が短縮されます。
3.集約放牧
(1) 滞牧日数及び牧区の区切り方
滞牧日数は余り長くならないように輪換放牧をします。理想的には1日で輪換放牧するOne day grazing方式、さらには1日の中、電気牧柵を数回移動して放牧する超集約的なストリップグレージング方式があります。
(2) 短草利用の厳守
短い草丈の牧草は栄養価が高く好んで採食されるので、常に短草状態で放牧できるように心掛けます。そのためには、春の入牧時期を早め放牧面積を牧草の生育量に合わせて調整すること(採草・放牧兼用利用)が基本となります。
(3) 泌乳牛と乾乳牛との先行後追い放牧
養分要求量の高い搾乳牛を放牧した後に、乾乳牛を掃除刈り的に放牧することにより、草地の利用率を高め、短草利用も可能になります。
4.季節分娩
草の生育量が最も多く、草質が最も高い4~5月に、乳量の最も多い時期を合わせるのが、放牧の最も効率的なやり方ですし、冬期間の貯蔵飼料の給与量も少なくて済みます。 また、分娩時期を春に集中させることによって、搾乳作業のない農閑期を持つこともできます。
ニュージーランドでは、CIDR(イージーブリード)を膣に挿入して発情の同期化を図ったり、クリーンアップブルを放牧して受精しなかった牛に自然交配させるなどして、受胎時期の集中化を図っています。
放牧のメリットを最大限に生かす早春分娩に向けて繁殖管理を行うようにします。