技術情報


  放牧酪農(マニュアル)

●放牧を導入する際の準備

1.牧区の配置
利用計画、通路、ゲート、飲水施設等を記した地図を作成します。放牧地は1番草収穫時までは7~8牧区、それ以降は11~12牧区が必要になります。1牧区の面積は草量によって異なりますが、放牧主体で飼養する場合は、1日1頭当たり2aを目安にします。

2.牧柵の設置
乳房や乳頭を傷つけることがあるので有刺鉄線はできるだけ使用しないようにします。外柵は高張力鋼線牧柵とし、内柵には電気牧柵を用います。

(1)高張力鋼線牧柵
高張力鋼線(100kgf)を線材として用い、柱には防腐剤の圧入処理した丸太を用います。最上段の高さは110cm,3段張りとします。
積雪地帯では冬季は緊張番を緩めて牧柵を倒しておけばよいので、バラ線の上げ下ろしの必要はなく、管理が楽です。

高張力鋼線牧柵
   
(2)電気牧柵
電気牧柵器から衝撃電流を間欠的に通電し、接触した家畜に電気ショックを与えることで、家畜の脱柵を防止します。電気牧柵器の電源は電灯電力、蓄電池、太陽電池等を用います。牧区を一時的に中仕切りする場合は、設置・移動が容易な支柱やリールに巻いたポリワイヤー、リボンワイヤーを使用します。

電気牧柵
   
(3)牧区のゲート
電気牧柵を用いた牧区のゲートには絶縁取っ手のついたスプリングゲートを用います。
自動ゲートはタイマーにより任意の時間にゲートを開閉することができます。開く時にブザーが鳴って、ゲートが開いたことを牛に知らせるように作られています。

自動ゲート

3.飲水施設の設置
放牧する牧区には水槽を設置できるように配管します。水槽は隣接した牧区から利用できるように牧区の境に設置するようにします。配管用パイプは20mmφの黒ポリパイプを用います。

簡易飲水施設

4.通路の整備
通路は1日に2回牛が往復し、泥濘化しやすいので、砂利・砕石の上に火山灰を敷き詰め、極力泥濘化を防止します。
通路の幅はトラクターが余裕を持って通れるように、最低5mは必要です。

5.放牧馴致
(1) 電気牧柵に慣らす。
(2) 哺育・育成期から草の食べ方を覚えさせる。
(3) 搾乳後は放牧地へ、搾乳時には畜舎へ戻ることを覚えさせる。
(4) スタンチョンの場所を覚えさせる。
 

放牧用通路
6.放牧に適した牛の選定
(1) 小型で肢蹄の丈夫な牛
(2) 乳成分の高い牛
(3) 草の採食性のよい牛