放牧畜産基準

1.目的

放牧を取り入れた畜産の生産方式(以下「放牧畜産」という。)は、牧草地、シバ型草地、野草地等の地域の土地資源を活用した、土―草―家畜が結びついた資源循環型畜産である。家畜にとって健康保持やアニマルウェルフェアの観点から優れた飼養管理方式であるばかりでなく、健康的に飼養された家畜から低コストで良質な畜産物を産出することができる生産方式である。
   さらに、この放牧畜産は、耕作放棄地の活用等国土の有効利用、保水、土壌流亡の防止等を通じた国土保全、大気浄化等による環境保全、緑空間等の景観の提供等の機能を有するとともに、国民への食育の場の提供等重要な役割を果たしている。
   このため現在、各地に芽生えつつある放牧畜産の展開を一層促進することが重要となっており、放牧畜産の普及にあたっては、放牧畜産について消費者の理解を得ることが重要である。
    この基準は、放牧畜産を実践する牧場(以下「放牧畜産実践牧場」という。)が消費者の支持を得るため、生産過程等において守るべき飼養管理事項について、全国の基本的な基準として設定するものである。

2.適 用

この基準が適用されるのは、酪農経営および肉用牛繁殖経営等である。

3.家畜の由来(畜産物を生産する家畜)

(1)原則として、自らの経営内で本基準により飼養した家畜から生産、育成した家畜とする。
(2)やむを得ない理由により、(1)の方法によって家畜を確保しがたい場合は、外部からの導入を認めるが、この場合はその来歴の情報を開示することとする。

4.放牧管理

(1)家畜1頭当たりの放牧地面積、放牧期間及び1日の放牧時間は、放牧により十分な粗飼料摂取を可能とし、かつ、地域の自然・土壌・植生・草勢に応じ草資源の再生力を持続的に維持することが可能なものとする。その具体的基準は、地域の自然条件により異なるが、次の表のいずれかを満たすものとする。
植生 成牛換算1頭当たり放牧面積 放牧期間 1日の放牧時間
牧草地 25a以上 自然条件から見て放牧が可能な全期間 昼夜放牧
夜間放牧又は昼間放牧
15a以上 自然条件から見て放牧が可能な全期間 夜間放牧又は昼間放牧
シバ型草地 45a以上 自然条件から見て放牧が可能な全期間 昼夜放牧
夜間放牧又は昼間放牧
野草地 90a以上 自然条件から見て放牧が可能な全期間 昼夜放牧
夜間放牧又は昼間放牧
40a以上 自然条件から見て放牧が可能な期間のうち100日以上とし、野草が衰退してきた場合は、牧草地への転換を行うことを条件とする。 昼夜放牧
夜間放牧又は昼間放牧

(2)放牧方法は、集約放牧、輪換放牧、定置放牧等、地域の自然条件や経営条件等に適合する方式とし、傾斜地での土壌流亡の防止、流水への牛の侵入防止、水飲み施設等の集合場所での泥濘化の防止等、放牧地の適切な管理に努める。
(3)牛の生理上不可欠と認められる塩等のミネラルの給与、放牧草不足時における自家生産のサイレージ等の補助飼料給与、子牛の発育遅延を防止するための別飼い飼料の給与は認められる。これらの飼料は、6.の規定を順守して生産した粗飼料、または経営外から導入した場合は「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」(以下「飼料安全法」という。)に基づく成分規格に合致したものを使用する。また同法に基づく対象家畜や使用上及び保存上の注意が表示されたものについては、これに従って使用しなければならない。

5.舎飼管理

(1)家畜の種付け、分娩、搾乳、飼料給与、悪天候時、冬期の放牧不可能期間等には畜舎内で飼養できるものとする。
(2)畜舎は家畜に快適な広さがあり、通風、採光が良好で、床、パドック、飼そう等は清潔に保ち、家畜にとって良好な衛生環境の保持に努める。
(3)舎飼時においても、家畜がパドック等で積極的に運動・日光浴をできるようにしなければならない。。
(4)舎飼時は、経営内で6.の規定を順守して生産した粗飼料を十分に給与すること。経営外から導入する飼料は、飼料安全法に基づく成分規格に合致したものを使用する。また、同法に基づく対象家畜や使用上及び保存上の注意が表示されたものについては、これに従って使用しなければならない。
(5)給与飼料への添加物は、農林水産大臣が飼料添加物と指定したものに限り使用を認め、かつ、使用にあたっては飼料安全法に基づく成分規格及び飼料の製造方法の基準を順守するものとする。
(6)舎飼時に排せつされる家畜のふん尿は「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」を順守し、適正に保管・処理するものとし、ほ場散布前に腐熟化させるよう努めるものとする。散布するほ場は経営内を原則とするが、販売等により経営外に供給する場合は、供給相手側に適正な土地還元等環境に配慮した措置を講じるよう要請することとする。
(7)適切に保管処理された家畜のふん尿の散布は、河川への流入や悪臭を防止するために、緩衝地帯の設置や散布方法等について適正な措置を講じなければならない。

6.採草地、放牧地、飼料畑の管理

(1)採草地、放牧地、飼料畑への施肥は本基準で飼養した家畜から排出され、適正に処理されたふん尿の散布を第一とし、これで必要な成分量が不足する場合は、外部から導入した堆肥などの家畜ふん尿及び化学肥料を散布することができる。
(2)これらの土地へ散布する農薬は必要最小限とし、やむを得ず使用する場合にあっても、農薬取締法で定める農薬毎の適用作物、使用時期、使用回数等を順守した使用に限る。

7.繁殖管理

(1)繁殖は、人工授精、受精卵移植及び自然交配によるものとし、クローン牛生産や遺伝子を直接操作した繁殖手段は用いない。
(2)要指示医薬品である繁殖用のホルモン剤は、獣医師の指示のもとに、薬事法に基づき動物用医薬品として承認されたものを用量・用法、使用上の注意及び使用基準を順守して使用するものとする。

8.衛生管理

(1)本基準の順守により、家畜の健康を維持・増進し、疾病の予防に努めるものとする。
(2)薬事法に基づき動物用医薬品として承認された要指示医薬品であるホルモン剤、抗菌性物質製剤、ワクチン及び駆虫剤は、獣医師の指示のもとに用法・用量、使用上の注意及び使用基準を順守して使用するものとする。

9.飼養管理等の記帳、開示

放牧畜産実践牧場として認証されるためには、以下の事項についてその内容を記帳し、証拠書類とともに8年間の保管を行い、記帳内容の開示に努めることとする。
(1)放牧畜産物を生産する家畜及び外部導入家畜の来歴
(2)成牛換算1頭当たり放牧地面積
(3)放牧期間と1日の放牧時間
(4)放牧の方法
(5)放牧時に給与した飼料の名称、給与年月日、給与量、給与場所
(6)舎飼時の1頭当たり牛房面積
(7)舎飼時に給与した飼料の名称、給与年月日、給与量、給与場所
(8)使用した飼料添加物の名称と使用時期、使用方法、使用量
(9)家畜排せつ物の処理及び利用方法
(10)採草地、放牧地、飼料畑へ施用した堆肥の施用量と来歴、化学肥料の種類毎の施用量
(11)採草地、放牧地、飼料畑へ播種した種子の種類
(12)採草地、放牧地、飼料畑へ施用した農薬の種類、施用した飼料作物名、施用時期及び回数、施用濃度、施用量
(13)繁殖方法
(14)治療履歴と使用したホルモン剤、抗菌性物質製剤、ワクチン、駆虫剤及び忌避剤等の動物用医薬品の名称と使用方法、使用量

10.情報公開

放牧畜産実践牧場は、消費者等から9.について情報開示要求があった場合は、情報開示を行うとともに、以下の項目についてインターネット等を通じ公開するよう努めるものとする。
 ① 当基準以外の自ら順守している生産基準等の内容
 ② 当該畜産物の販売方法等
 ③ 消費者との交流等放牧畜産の普及に関すること